賃貸経営の規模が拡大すると、利益は大きくなる一方で納める税金も高くなります。
そこで検討したいのが、資産管理法人の設立による節税です。
個人の資産をまとめて管理できるため、相続発生時の対策にもなります。
そこで今回は、賃貸経営で知っておきたい資産管理法人について解説します。
\お気軽にご相談ください!/
弊社へのお問い合わせはこちら賃貸経営における資産管理法人とは?
資産管理法人とは、不動産などの資産を所有する方が資産を管理する目的で設立する法人のことです。
おもな活動内容は個人の資産保全で、プライベートカンパニーとも呼ばれています。
一般的な企業や団体と異なり、営利活動や社会貢献活動などはおこないません。
このような資産管理法人の形態には、おもに次のものがあります。
株式会社
株式会社には、役員構成や株主構成を自由に設定できる特徴があります。
次世代への承継を目的とするなら、親が役員になり、株主(出資者)は子どもがなるといった方法が考えられます。
ただし設立にかかる費用は約25万円と、合同会社よりも高くなる点に注意してください。
合同会社
合同会社には、役員が必ず出資者になるという特徴があります。
その代わり設立費用は約10万円と、株式会社よりも安価に設定されています。
なお、株式会社と比較して資金調達の方法は限定されており、事業継承もしにくい点に注意してください。
その他の形態
その他の形態として、以前は一般社団法人が用いられる傾向にありました。
しかし課税要件が拡大されたことで、相続税対策としてのメリットは薄れています。
そのため、賃貸経営で資産管理法人を設立する際は、株式会社もしくは合同会社がおすすめです。
資産管理法人を設立したほうが良いケース
個人に課せられる所得税は、所得が大きいほど税率が高くなります。
しかし法人税の税率は一定なので、一定の金額を超えると法人税のほうが安くなる特徴があります。
具体的には、年間所得が900万円を超えると、個人と法人で税率が逆転するため、資産管理法人の設立がおすすめです。
また、所得が900万円未満でも多数の不動産を所有しているなら、資産管理法人の設立を検討しても良いでしょう。
とくに相続人が複数いるケースでは、資産を法人名義で管理しておくことで、相続争いに発展するリスクを減らせる可能性があります。
賃貸経営で資産管理法人を設立するメリット
賃貸経営では、資産管理法人を設立すると税制面においてさまざまなメリットがあります。
そこで、資産管理法人の設立にはどのようなメリットがあるのか、ポイントとともに確認していきましょう。
所得税の節税効果がある
賃貸経営などで得た所得には、所得税が課せられます。
累進課税の対象である所得税は、所得額に応じて5~45%の税率が適用されます。
一方、法人に課せられる法人税の税率は、次のとおりです。
資本金1億円以下の法人の場合
●年800万円以下の部分:15%
●年800万円超の部分:23.2%
所得額によっては、個人と法人では税率が20%以上も異なります。
そのため、賃貸経営により所得が一定を超えるときは、資産管理法人の設立により節税効果が期待できるでしょう。
所得を分散できる
資産管理法人を設立すると、自分以外の家族などに所得を分散できます。
たとえば、給与所得は103万円以下までなら所得税がかかりません。
そのため、家族1人あたり103万円までの役員報酬なら、非課税の範囲内で所得を分散できます。
さらに支払った給与は経費に計上できるため、資産管理法人にかかる税金の節税効果も期待できるでしょう。
このほか、以下の費用を経費として計上できます。
●退職金
●生命保険料
●住宅ローンの支払利息
●自宅の減価償却費
●自宅の家賃
●所有物件の管理にかかる日当
マイホームを資産管理法人名義で所有・契約して社宅扱いにすると、住宅ローンの支払利息や家賃を経費として計上できます。
このほか、遠方にある物件の賃貸経営に関する費用(現地を訪問する際の交通費など)や日当なども、経費に計上可能です。
相続税の対策になる
資産管理法人による所得の分散は、相続税対策にもつながります。
個人として生前贈与すると、非課税枠の110万円を超える贈与税がかかります。
そこで、資産管理法人から役員報酬として支払えば、贈与税よりも税率の低い所得税として資産の移動が可能です。
また、相続が発生したときも資産の所有権は資産管理法人にあります。
そのため、不動産が相続人の共有持分になるなどして賃貸経営が負担となる心配がありません。
さらに相続人を法人役員にしておけば、賃貸経営で得られた利益を役員報酬の形で分配できるメリットがあります。
賃貸経営で資産管理法人を設立するデメリット
賃貸経営にあたり資産管理法人を設立するときには、気を付けたいデメリットもあります。
どのようなデメリットがあるのか、対策方法とともに確認していきましょう。
設立手続きに手間がかかる
資産管理法人の設立手続きには、手間と費用がかかります。
行政書士などに依頼した場合、合同会社で約15万円、株式会社で約25万円の依頼手数料が必要です。
自分でおこなえば費用は抑えられるものの、複雑な手続きになるため注意してください。
法人維持の費用がかかる
資産管理法人は、設立だけでなく維持にも費用がかかります。
たとえば賃貸経営が赤字だとしても、法人住民税として約7万円はかならず発生します。
また、会計処理などは個人よりも複雑になるため、税理士や会計士に依頼することになるでしょう。
依頼内容にもよりますが、税理士費用として年間25万円~30万円を見込んでおく必要があります。
資金の移転に費用がかかる
資産管理法人が保有する資産は、オーナーであってもプライベートには使用できません。
プライベートの用途で利用する際は、資産管理法人から個人へ資金を移動する必要があります。
これらは役員報酬や配当として支払うことになるため、所得税・住民税の課税対象となる点に注意してください。
長期譲渡所得の優遇税率を利用できない
賃貸経営では、不動産売却により収益物件を手放すことがあります。
個人と法人では、不動産売却の際に発生する税金の扱いが異なる点に注意が必要です。
個人が不動産を売却したときの譲渡所得は、給与所得などほかの所得とは区別して税金を計算する分離課税の対象です。
そして、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるときには、長期譲渡所得として優遇税率が適用されます。
一方の法人は、不動産売却で得た収入は、ほかの事業で得た収入と合算して課税所得を求めます。
そして、資本金や課税所得の金額に応じた税率が適用されるため、長期譲渡所得の優遇税率は適用されません。
節税効果を期待できる場合もある
賃貸経営において、不動産売却で必ずしも利益が発生するとは限りません。
不動産売却により損失が発生したときには、法人全体としての収入は少なくなり、結果として節税につながる場合があります。
不動産売却で損失が発生し法人として赤字決算となれば、法人税はゼロとなるためです。
そのため、資産管理法人として不動産売却する際は、売却のタイミングに注意すると良いでしょう。
たとえばほかの事業や所有物件で大きな利益が得られた年に、不動産売却による損失を計上できれば、その分だけ法人税の節税効果が期待できます。
まとめ
資産管理法人とはどのようなものなのか、賃貸経営におけるメリット・デメリットとともに解説しました。
個人と法人では所得に適用される税率などが異なるため、賃貸経営の規模によっては法人設立で節税効果が期待できます。
そこで、収益物件などの不動産を数多く所有している方は、資産管理法人の設立を検討してみてはいかがでしょうか。
\お気軽にご相談ください!/
弊社へのお問い合わせはこちら